令和が始まりましたね(まだアメリカは4月ですが)。
・10:50-12:15 demtech(stable populationの復習とkinship availability)
・12:15-13:30 demsem(biodemographyの発表で面白かった)。
・13:30-14:30 友人の論文へのコメント
・14:30-15:45 stats(mediation analysisでCDEやNDEなど新しい用語を学ぶ)
・15:45-16:30 統計の課題(mediationを済ませる)
・16:30-17:30 demtech extra(kinshipと期末のプレップ)
・17:30-19:00 統計の課題(fixed/random effectsを済ませる)。
April 30, 2019
April 24, 2019
日本で社会学の博士号を取った若手研究者のポスドクに対するアプローチ
これから日本で博士号とって3年くらいポスドクを考えてる人は、ぜひその期間を海外での研究生活に使って欲しいと思っている。英語で将来的に論文を書きたいと考えている研究者には、特に考えて欲しい。今回の記事は、いくつかの項目に分けて、どのようなポスドク経験をするのが個人的に良いと考えているかをまとめたものである。
どこに行くか?
どこの国・機関にするかは最初に考えるところだろう。色々と選択肢があると思うが、私の研究分野(階層論、人口学、家族、労働、教育etc)では、新しい研究は常にアメリカにあるため、まずはアメリカの研究機関でフィットする所を探して欲しい。
アメリカの大学の中で、関心の近い研究者が多く集まって海外からのポスドクもピアとして受け入れてくれるような研究所に行くつもりで選ぶのがいいと思う。ポスドクはすでに博士号を取った一人前の研究者という扱いを受ける。これから専門を決める博士課程の学生は様々なサブフィールドの中から自分の研究したい分野を決定するため、大学院プログラムごとにどこに行くべきかを考えるが、すでに専門が決まっているポスドクの場合には、学部(社会学なら社会学部)でみていても、9割のファカルティとは関心が被らないだろう。他の人とコラボしたいというマインドを持っているならば、どの人のところに行くかではなく、どの研究所に行くかで考えた方がいいだろう。その大学の研究所がどういうクラスターを強みとして持っていて、どれくらいの頻度で外部の研究者を招いたセミナーをやっていて、どれくらい研究所のメンバーと一緒に研究するカルチャーがあるのかは非常に大事な要素だと思う。
もちろん、オフィスをもらって一人で集中的に研究するのでもいいのかもしれない。しかし、ポスドクの目的は一人前の研究者となってから、今後の共同研究者を見つけたり、博論での専門分野を軸に視野を広げることにあるので、あくまで基本的な関心は近く、自分の中心的なトピックからは多少派生している研究をしている人がアクティブな状態でいる機関を選ぶのがいいだろう。アメリカの社会学部も、その中は非常に多様なので、学部が主催するセミナーはあまり関心が近くないことのほうが多い(そういうセミナーに出席することも重要ではある)。そういう意味では、大学の研究所にコミットする方がメリットが多いと考える。
弊学でファカルティやポスドク、学生がどのように研究活動しているかを1年間観察して思うのは、博士課程の学生と違い、授業に出る必要のない(出てもいい、というか出ることを勧める)ポスドクは、極端な話ではあるが、メンター以外誰とも知り合う必要はない。このような性格上、孤立しやすいポジションだからこそ、海外からのポスドクでも他の同僚・学生に紹介してくれるメンターが必要であるし、メンバーの交流が盛んな研究所に行く方がいい。
どれくらい行くか?
学振PDは採用期間の半分(1.5年)の海外での研究期間での研究を認めているのであまり現実的ではないかもしれないが、個人的には1年と言わず、2年、3年ほどいた方がいいと考えている。もしメンターを含む同僚との共同研究のチャンスを伺う場合には、1年は短すぎるからだ。最初の3ヶ月くらいは環境に慣れるのでおおよそ時間が過ぎる。メンター以外に知り合ったファカルティの教員や研究者と軽く自分の関心を話すのを繰り返していれば、それくらいの時間はあっという間に過ぎてしまう。
私の一年目は(当たり前だが)コースワークと並行だったので非常に遅々としたものだったが、渡米後すぐ今の指導教員と一緒に研究を始めても、まだ論文は投稿には至っていない。他のポスドク1年目の人も似たような印象を持っている。つまるところ、最低2年は同じところにいなければ、成果らしい成果を出すことは難しいのではないかと考えている。
共同研究は意図的に誘うこともあれば、会話の中で非意図的に生まれることもあるが、いずれにしてもあってすぐ研究をスタートすることは稀なので、論文を書き始めることには季節が変わっている。その頃には学会報告の締め切りが近づくこともあるので、とりあえずアブストを作って一安心、みたいになる時期かもしれない。そうやっているうちに半年くらい経っている。ポスドクは研究しかしなくていいので、それから半年あれば論文は書き上げられるかもしれないが、メンターは基本的に激務なので、1年以内に論文を投稿できる段階まで持っていければかなり速いペースだろう。
実際には、1年のサイクルで学会があるので、学会報告を終えてカラフルペーパーを済ませ、投稿先を考える段階に入る。そうやっているうちに2年目になるものだ。
長く時間を過ごすことのメリットは直的な論文執筆にとどまらない。上記のようにファカルティの教員や研究者と時間を過ごしていれば、2年目になる頃には、研究所のセミナーでの報告を誘われるかもしれない。報告すれば多くの人が自分の研究を知ってくれるだろう。研究というのは、人と知り合い、研究の話して、アドバイスをしたり、時にはアドバイスをしたり、論文を一緒に書いたり、書いた論文にコメントをもらったり報告したり、そこで新しい人に知り合ったり、これらの繰り返しである。
研究以外に何をするか?
ポスドク期間は論文執筆に勤しむのもいいかもしれないが、自分の視野を広げる活動は色々とある。個人的には、知り合いを作るという意味でも、大学院の議論中心のセミナーを聴講するのを勧めたい。2学期間履修した人口学の文献購読セミナーは一番印象に残っていて、人口に対する考えがガラッと変わった。計量的なアプローチの研究者は多かれ少なかれ人口を対象にしているので、このような授業は必ず役に立つだろう。サブスタンスだけではなく、メソッドに焦点を当てたセミナーや、授業を履修するのもいいだろう。
余談だが、人口学セミナーを履修した代償として、今では研究所のセミナーで人種や移民について報告する経済学者の報告の半分くらい、分析のフレーミングが差別的な想定をしていて受け入れられなくなってしまった。社会学者も人種を独立変数にして分析をするが、社会学的には人種は個人の特性という性格以上に、もっと歴史的な、文脈的な意味を含んでいるので、それらを無視して人種の格差を議論しようとすると、結果の解釈が非常に個人の行動ベースのものになり、変数の関係の背後にある構造的な背景を見逃すことになってしまう。この辺りは経済学と社会学の考え方の違いでもあり、社会学でもそういった文脈を一切無視した研究者もいるので簡単に割り切れるものではないが、こういった視点は個人的には非常に大切だと思う。したがって、人口学の文献購読は人口学のふりして社会学的な認識を養う機会だった。
どこに行くか?
どこの国・機関にするかは最初に考えるところだろう。色々と選択肢があると思うが、私の研究分野(階層論、人口学、家族、労働、教育etc)では、新しい研究は常にアメリカにあるため、まずはアメリカの研究機関でフィットする所を探して欲しい。
アメリカの大学の中で、関心の近い研究者が多く集まって海外からのポスドクもピアとして受け入れてくれるような研究所に行くつもりで選ぶのがいいと思う。ポスドクはすでに博士号を取った一人前の研究者という扱いを受ける。これから専門を決める博士課程の学生は様々なサブフィールドの中から自分の研究したい分野を決定するため、大学院プログラムごとにどこに行くべきかを考えるが、すでに専門が決まっているポスドクの場合には、学部(社会学なら社会学部)でみていても、9割のファカルティとは関心が被らないだろう。他の人とコラボしたいというマインドを持っているならば、どの人のところに行くかではなく、どの研究所に行くかで考えた方がいいだろう。その大学の研究所がどういうクラスターを強みとして持っていて、どれくらいの頻度で外部の研究者を招いたセミナーをやっていて、どれくらい研究所のメンバーと一緒に研究するカルチャーがあるのかは非常に大事な要素だと思う。
もちろん、オフィスをもらって一人で集中的に研究するのでもいいのかもしれない。しかし、ポスドクの目的は一人前の研究者となってから、今後の共同研究者を見つけたり、博論での専門分野を軸に視野を広げることにあるので、あくまで基本的な関心は近く、自分の中心的なトピックからは多少派生している研究をしている人がアクティブな状態でいる機関を選ぶのがいいだろう。アメリカの社会学部も、その中は非常に多様なので、学部が主催するセミナーはあまり関心が近くないことのほうが多い(そういうセミナーに出席することも重要ではある)。そういう意味では、大学の研究所にコミットする方がメリットが多いと考える。
弊学でファカルティやポスドク、学生がどのように研究活動しているかを1年間観察して思うのは、博士課程の学生と違い、授業に出る必要のない(出てもいい、というか出ることを勧める)ポスドクは、極端な話ではあるが、メンター以外誰とも知り合う必要はない。このような性格上、孤立しやすいポジションだからこそ、海外からのポスドクでも他の同僚・学生に紹介してくれるメンターが必要であるし、メンバーの交流が盛んな研究所に行く方がいい。
どれくらい行くか?
学振PDは採用期間の半分(1.5年)の海外での研究期間での研究を認めているのであまり現実的ではないかもしれないが、個人的には1年と言わず、2年、3年ほどいた方がいいと考えている。もしメンターを含む同僚との共同研究のチャンスを伺う場合には、1年は短すぎるからだ。最初の3ヶ月くらいは環境に慣れるのでおおよそ時間が過ぎる。メンター以外に知り合ったファカルティの教員や研究者と軽く自分の関心を話すのを繰り返していれば、それくらいの時間はあっという間に過ぎてしまう。
私の一年目は(当たり前だが)コースワークと並行だったので非常に遅々としたものだったが、渡米後すぐ今の指導教員と一緒に研究を始めても、まだ論文は投稿には至っていない。他のポスドク1年目の人も似たような印象を持っている。つまるところ、最低2年は同じところにいなければ、成果らしい成果を出すことは難しいのではないかと考えている。
共同研究は意図的に誘うこともあれば、会話の中で非意図的に生まれることもあるが、いずれにしてもあってすぐ研究をスタートすることは稀なので、論文を書き始めることには季節が変わっている。その頃には学会報告の締め切りが近づくこともあるので、とりあえずアブストを作って一安心、みたいになる時期かもしれない。そうやっているうちに半年くらい経っている。ポスドクは研究しかしなくていいので、それから半年あれば論文は書き上げられるかもしれないが、メンターは基本的に激務なので、1年以内に論文を投稿できる段階まで持っていければかなり速いペースだろう。
実際には、1年のサイクルで学会があるので、学会報告を終えてカラフルペーパーを済ませ、投稿先を考える段階に入る。そうやっているうちに2年目になるものだ。
長く時間を過ごすことのメリットは直的な論文執筆にとどまらない。上記のようにファカルティの教員や研究者と時間を過ごしていれば、2年目になる頃には、研究所のセミナーでの報告を誘われるかもしれない。報告すれば多くの人が自分の研究を知ってくれるだろう。研究というのは、人と知り合い、研究の話して、アドバイスをしたり、時にはアドバイスをしたり、論文を一緒に書いたり、書いた論文にコメントをもらったり報告したり、そこで新しい人に知り合ったり、これらの繰り返しである。
研究以外に何をするか?
ポスドク期間は論文執筆に勤しむのもいいかもしれないが、自分の視野を広げる活動は色々とある。個人的には、知り合いを作るという意味でも、大学院の議論中心のセミナーを聴講するのを勧めたい。2学期間履修した人口学の文献購読セミナーは一番印象に残っていて、人口に対する考えがガラッと変わった。計量的なアプローチの研究者は多かれ少なかれ人口を対象にしているので、このような授業は必ず役に立つだろう。サブスタンスだけではなく、メソッドに焦点を当てたセミナーや、授業を履修するのもいいだろう。
余談だが、人口学セミナーを履修した代償として、今では研究所のセミナーで人種や移民について報告する経済学者の報告の半分くらい、分析のフレーミングが差別的な想定をしていて受け入れられなくなってしまった。社会学者も人種を独立変数にして分析をするが、社会学的には人種は個人の特性という性格以上に、もっと歴史的な、文脈的な意味を含んでいるので、それらを無視して人種の格差を議論しようとすると、結果の解釈が非常に個人の行動ベースのものになり、変数の関係の背後にある構造的な背景を見逃すことになってしまう。この辺りは経済学と社会学の考え方の違いでもあり、社会学でもそういった文脈を一切無視した研究者もいるので簡単に割り切れるものではないが、こういった視点は個人的には非常に大切だと思う。したがって、人口学の文献購読は人口学のふりして社会学的な認識を養う機会だった。
April 11, 2019
PAA2019 1日目: Data viz
今日からPAA開始、といっても多くの人が来るのは18時からのwelcome mixerだけ。我々はまず、午前9時から開始されるdata vizのセッションに行った。データをどうやって可視化し、伝えていくかと言うのは人口学、あるいは社会科学一般で重要になってきており、UW-Madisonも形式人口学の授業でggplot2を使って課題の結果をvizすることが推奨されている。
講師の方はDCのシンクタンクに勤めている人で、職業柄、論文ではなく2ページのブリーフサマリーしか読まない人にも分析の結果を伝えなくてはいけないので、そう言うこともあってdata vizを専門にしていると言う。参加者のうち、大学院生は比較的少数で、多くは講師の人と同じようなバックグラウントを持つ民間セクターの人や政府機関の人だった。data vizを学生に教えなくてはいけないという教授の人も来ていた。
セッション自体はdata vizの基礎的な考え方がメインで、実習パートはなかった。これは参加者の背景や使用するソフトウェアの多様性を考えると仕方ないかなと思う。4時間程度のセッションで、いくつかtipsを持ち帰ることができた。4つほどあげると、
講師の方はDCのシンクタンクに勤めている人で、職業柄、論文ではなく2ページのブリーフサマリーしか読まない人にも分析の結果を伝えなくてはいけないので、そう言うこともあってdata vizを専門にしていると言う。参加者のうち、大学院生は比較的少数で、多くは講師の人と同じようなバックグラウントを持つ民間セクターの人や政府機関の人だった。data vizを学生に教えなくてはいけないという教授の人も来ていた。
セッション自体はdata vizの基礎的な考え方がメインで、実習パートはなかった。これは参加者の背景や使用するソフトウェアの多様性を考えると仕方ないかなと思う。4時間程度のセッションで、いくつかtipsを持ち帰ることができた。4つほどあげると、
- Consider who is your audience : 当たり前だが、研究の報告には「誰に」報告したいかという問題がある。当たり前すぎてあまりかんがえていなかったが、講師のメッセージは同じデータを使ったグラフでも、誰がオーディエンスなのかによってrepresentationを変えるべきというものである。例えば、論文に投稿するような図であれば多くの色は使えないので別の方法を考える必要がある。一般向けに報告する場合は、その人が知らないような表現の仕方をいちいち説明している時間はないかもしれない。そのため、最後にあげるパイチャートの限定的な使用もOKなのではないかというアドバイスもあった。
- Make a graph title active : これはあまりdata vizの文脈で考えていなかったが、タイトルとグラフを連動させるというアドバイスだった。研究者の作るグラフのタイトルは、おおよそtrends in ~だったり、results from...みたいなメッセージ性にかけるものが多い。もしかするとタイトルにグラフの解釈を入れないで客観的であろうとしているのかもしれないが、実際には数あるデータの中から特定のデータを特定の形で表現している時点で主観性が入っているわけで、それならしっかりと伝えたいメッセージをタイトルにも入れるべきだろうというものだ。その証拠として、アイトラッキングの実験データを紹介してくれた。この結果によると、人が論文やポスターを読む時にやはりタイトルに注視しているということだった。人の目に多く触れるのに味気ないタイトルでは記憶してもらえない、という主張なのかなと思った。具体的には、Growing trends in ..だったりRise and fall of ...みたいなグラフから読み取れるトレンド自体をタイトルに含めるという例が紹介された。
- Start with a gray graph and then think about how you can improve it : これはかなり実践的なアドバイスだと思った。エクセルにしろggplotにしろ、デフォルトのグラフには色がついているのでそれで満足してしまう。講師の人のアドバイスはデフォルトからいじろうとするのではなく、一度全ての色をグレーにしてしまうというもの。こうすることで、全てのグラフのエリアや線が同じになってしまうので、どこを強調したいのかがわからなくなる。逆にいうと、グレーのグラフから始めることで改めてこのグラフではどこを強調したほうがいいのかを強制的に考えることができる。
- Use pie charts “with care”: バイチャート(円グラフ)が悪名高いのは広く知られるようになったが、講師の人は限定的な使用ならOKではないかというスタンスで面白かった。パイチャートは一般の人に非常に広く知れ渡っているので、日アカデミアの人は他のグラフよりもわかりやすさを覚えるという。したがって、オーディエンスが特定の層の場合においては、パイチャートの仕様も悪くない。さらに、パイチャートの悪い点はパイチャート内の割合同士を比較することが非常に難しいことにある。しかし、もしパイチャートで1つや明らかに割合が異なる2つの部分だけを強調したい場合には、そこに強調の色をつけて、他の割合は全てグレーにしてしまう。こうすることによって、オーディエンスは色がついた部分が重要なのだと理解してくれるし、2つまでなら割合も比べやすい。
ワークショップ終了後、作業をして18時からのウェルカムミキサーに参加。いろんなところで会った人がこの学会に一堂に会してて、やはりここがホームだなと感じた。カーチャさんと5年ぶりに会って色々話せたのが特によかった。
April 9, 2019
PAA 0日目: Sociogenomics - Biodemography workshop
昨日からPAAでテキサス州のオースティンに入っています。日頃のコースワークから解放されてかなりテンションが高いです。今日は学会前に開催されているワークショップに参加してきました。トピックは社会ゲノミクスです。個人の遺伝子情報を取得する金銭的なコストが劇的に減ったこともあり、ゲノムを使った分析はこの10年で飛躍的に(本当に飛躍的に)発展しています。以前、オックスフォードで開かれた院生カンファレンスのイベントの一環でこのテーマの話を聞いてから関心を持ち、読書会やマディソンにゲノムの人がきたら積極的にあって話を聞くようにしてきました。
今回は1日と短いですが朝から夕方までの短期集中のセミナーで分析ソフトを使ったでもまで含められていたので、思い切って参加してみました。結論から言うと、表面的に接してきた社会ゲノミクスについて、かなり深く理解できるようになったと思います。
今回のセミナーで改めて重要だなと思った点は、遺伝子によって説明される特性の違いは、あくまで集団内のばらつきを説明するために用いるものであり、集団間の比較に用いてはいけないと言うものでした。人口学などの社会科学分野で関心のある特性、例えば身長などは、あくまで集団レベルにおいて遺伝子との関連がわかるものであり、それはheritabilityとして定義されます。heritabilityはあくまで集団の中でどれだけ遺伝子が特性のばらつきを説明するかと言う指標なので、集団間の身長の差を遺伝に帰することは誤りだと言うことです。これは、かなり重要な指摘だなと思いました。例えば、私たちはある集団間(例えば日本人とアメリカ人)の特性の違い(身長)がどれだけ遺伝的な要因によって説明できるか、と考えてしまうかもしれませんが、遺伝によって説明される集団レベルの特徴は、飽くまで集団内の分散を説明するものなので、平均値で集団間で差があったとしてもそれぞれの集団においてheritabilityが説明する度合いは同じであるかもしれないからです。
講師の一人のFelixさんは以前イギリスでお会いしていたこともあったので、話は重複しているところもありましたが、もう一人の講師であるRobbeeさんの研究は非常に刺激的でした。彼の研究は遺伝によって教育年数がどれだけ説明できるのか、と言うものでしたが、GWASの研究の話を進める中で、ある表現型(例えば喫煙行動と飲酒行動)がどれだけ遺伝子的要因を共有しているかというgenetic correrationの研究を紹介してくれました。彼自身は遺伝子が表現型が出る前にpre-determinedされていると言う想定に対しては距離を置いていましたが、このgenetic correlationを非異性愛行動とウェルビーイングの関係に応用した最新の研究を紹介してくれました。これが非常に面白かったです。データベースとして使用したのはイギリスのBritish cohort studyとアメリカの23andmeですが、これらのデータは対象とするコーホートが異なり、ある種の時代差をつかむことができます。非異性愛行動をする人はそうでない人に比べてメンタルヘルスや主観的健康感が低いと言う結果があったのですが、これらの変数を予測する遺伝的要因を特定した後で、その両者の相関をみたところ、古いコーホートを対象にしたBCSでは遺伝を介した相関は負、つまり非異性愛行動の人はヘルスが低いと言う関係があったのですが、新しいコーホートを対象にした23andmeでは遺伝を関した関連が正になっていることがわかったとのことです。これは、近年のコーホートでは非異性愛行動をする人が必ずしもヘルスを悪化させるわけではないと言うことで、時代的な変化を反映しているものと理解されていました。
午後の授業はplinkというターミナル上で走らせるGWAS専用のソフトウェアを使ってポリジェニックスコアを求めたり、そのスコアを回帰分析に投入するまでの一連の作業がカバーされたので、時間的に少しきつかったところはありますが、非常に勉強になりました。他にも、GWASからポリジェニックスコアへの変換の考え方についても理解が深まり、有意義なワークショップとなりました。
今回は1日と短いですが朝から夕方までの短期集中のセミナーで分析ソフトを使ったでもまで含められていたので、思い切って参加してみました。結論から言うと、表面的に接してきた社会ゲノミクスについて、かなり深く理解できるようになったと思います。
今回のセミナーで改めて重要だなと思った点は、遺伝子によって説明される特性の違いは、あくまで集団内のばらつきを説明するために用いるものであり、集団間の比較に用いてはいけないと言うものでした。人口学などの社会科学分野で関心のある特性、例えば身長などは、あくまで集団レベルにおいて遺伝子との関連がわかるものであり、それはheritabilityとして定義されます。heritabilityはあくまで集団の中でどれだけ遺伝子が特性のばらつきを説明するかと言う指標なので、集団間の身長の差を遺伝に帰することは誤りだと言うことです。これは、かなり重要な指摘だなと思いました。例えば、私たちはある集団間(例えば日本人とアメリカ人)の特性の違い(身長)がどれだけ遺伝的な要因によって説明できるか、と考えてしまうかもしれませんが、遺伝によって説明される集団レベルの特徴は、飽くまで集団内の分散を説明するものなので、平均値で集団間で差があったとしてもそれぞれの集団においてheritabilityが説明する度合いは同じであるかもしれないからです。
講師の一人のFelixさんは以前イギリスでお会いしていたこともあったので、話は重複しているところもありましたが、もう一人の講師であるRobbeeさんの研究は非常に刺激的でした。彼の研究は遺伝によって教育年数がどれだけ説明できるのか、と言うものでしたが、GWASの研究の話を進める中で、ある表現型(例えば喫煙行動と飲酒行動)がどれだけ遺伝子的要因を共有しているかというgenetic correrationの研究を紹介してくれました。彼自身は遺伝子が表現型が出る前にpre-determinedされていると言う想定に対しては距離を置いていましたが、このgenetic correlationを非異性愛行動とウェルビーイングの関係に応用した最新の研究を紹介してくれました。これが非常に面白かったです。データベースとして使用したのはイギリスのBritish cohort studyとアメリカの23andmeですが、これらのデータは対象とするコーホートが異なり、ある種の時代差をつかむことができます。非異性愛行動をする人はそうでない人に比べてメンタルヘルスや主観的健康感が低いと言う結果があったのですが、これらの変数を予測する遺伝的要因を特定した後で、その両者の相関をみたところ、古いコーホートを対象にしたBCSでは遺伝を介した相関は負、つまり非異性愛行動の人はヘルスが低いと言う関係があったのですが、新しいコーホートを対象にした23andmeでは遺伝を関した関連が正になっていることがわかったとのことです。これは、近年のコーホートでは非異性愛行動をする人が必ずしもヘルスを悪化させるわけではないと言うことで、時代的な変化を反映しているものと理解されていました。
午後の授業はplinkというターミナル上で走らせるGWAS専用のソフトウェアを使ってポリジェニックスコアを求めたり、そのスコアを回帰分析に投入するまでの一連の作業がカバーされたので、時間的に少しきつかったところはありますが、非常に勉強になりました。他にも、GWASからポリジェニックスコアへの変換の考え方についても理解が深まり、有意義なワークショップとなりました。
April 4, 2019
Tax Return in Wisconsin for NPR
初めてアメリカで確定申告をしたのでそのまとめ。
Federal
基本的に大学が作ってくれたフォームにしたがって入力していけばできるのでそこまで大変ではない。W-2と1042Sを両方添付。
Wisconsin
こちらがややこしい。大学がフォームを提供してないからだ。WI州が提供しているpdf(Form 1NPR)に自分で入力する必要がある(非常にめんどくさい)。人によって提出する書類は異なるが、私の場合にはW2だけでよかった。WIはscholarshipが課税対象にならない特別な州らしく、Other incomeの欄はブランクでいい。
ちなみに、外国人はどちらもSD(standard deduction)はもらえないので注意。
Federal
基本的に大学が作ってくれたフォームにしたがって入力していけばできるのでそこまで大変ではない。W-2と1042Sを両方添付。
Wisconsin
こちらがややこしい。大学がフォームを提供してないからだ。WI州が提供しているpdf(Form 1NPR)に自分で入力する必要がある(非常にめんどくさい)。人によって提出する書類は異なるが、私の場合にはW2だけでよかった。WIはscholarshipが課税対象にならない特別な州らしく、Other incomeの欄はブランクでいい。
ちなみに、外国人はどちらもSD(standard deduction)はもらえないので注意。