April 8, 2014

卒論関係の論文を少し

Brinton, Mary C. 2007. Gendered Offices: A Comparative-Historical Examination of Clerical Work in Japan and the United States, in Rosenbluth, F. M. (Ed.). The political economy of Japan's low fertility. Stanford University Press.
 Clerical workersの歴史的な発展を日米で比較した論文。女性が事務職に就く割合は日本よりもアメリカの方がどのコーホートを見ても高い。特に、アメリカでは初職が事務職だった人の多くが結婚後に仕事に復帰するのに対して、日本では、初職が事務職だった女性は30代の時には半分以上が労働市場に残っていない。女性が結婚後に就く最初の職業のうち事務職は2割程度しか占めず、ほとんどが製造業とBrintonは指摘している(95年までのデータなので現在は違うとは思う)。アメリカでは、事務職の女性化が女性の学歴獲得・上昇移動のアスピレーションを高めることにつながり、結果的に管理職の女性比率も上昇していったのに対して、日本でも事務職の女性化は起こったが、彼女たちは結婚・出産後に事務職に留まることはなく(M字カーブ)、上昇移動へのきっかけとはならなかった。女性の管理職比率を3割にすると言っても、日本のように就職してからいきなり管理職的な仕事を任されない企業文化の国ではなおさら、企業内部の昇進プロセス、特に教育程度の高い人がつくと考えられる事務職のそれについて考えるのが重要なのだろう。
Chang, C.-F., and P. England. 2011. “Gender Inequality in Earnings in Industrialized East Asia.” Social Science Research 40(1):1–14.
 この論文では、日本、韓国、台湾の三つの産業化した東アジアの国のデータ(EASS)を用いて、男女の賃金格差の原因の違いを検討している。分析の結果、日本では、多くの女性がパートタイムで働いており、これが他国に比べて、男女の賃金格差の要因となっている。韓国では、男性の大卒割合が高く、これが賃金格差の要因として大きい。台湾では、賃金格差が一番少なく、女性の学歴も男性より高い傾向にあるという。

Hertog, E. 2008. “‘The Worst Abuse Against a Child Is the Absence of a Parent’: How Japanese Unwed Mothers Evaluate Their Decision to Have a Child Outside Wedlock.” Japan Forum 20(2):193–217.
 この論文では、シングルマザーが忌避されるのは、子育ての規範が重要だと主張する。unwed motherは離婚した人を含まず、結婚せずに子どもを持つことを選択したシングルマザーを指している。この論文では、ひとり親を回避する理由として最もよく挙げられる経済的な不安定さと法的な差別について、これだけでは不十分とする。経済的な不安定では、シングルマザーと離婚した人の間には福祉の供給でほとんど違いがなく、離婚の増加に対してシングルマザーが少ないことを説明しない。戸籍上の差別も、近年になって消えてきている。この論文では、まず西洋とは異なり日本では子どもはタブララサの状態で生まれ、親や教師の教育と彼らの努力によって成功するかが大きく変わると考えられているとする。同時に、母親たちは一人親の過程で育った家庭の子どもの将来について罪深さを感じている。彼らにとって、未婚が子どもにもたらす利益は何もないと考えられている。また、母親たちは父親の役割を認めており、同時に多くが子どもに一人親であることを告げるのをためらっている。Goodmanらの知見を引きながら、シングルマザーの少なさを子育て規範に求める分析は鋭いと思った。

Hertog, E., and M. Iwasawa. 2011. “Marriage, Abortion, or Unwed Motherhood? How Women Evaluate Alternative Solutions to Premarital Pregnancies in Japan and the United States.” Journal of Family Issues 32(12):1674–99.
 この論文では、日本におけるシングルマザーの質的調査と日米の20歳から49歳までの対象者への量的調査から、結婚前の妊娠に対してとる三つの行動(結婚、中絶、一人親)への意味付けを検討している。日米とも、結婚前の妊娠は増加しているが、アメリカでは結婚せずに出産する選択が増加しているのに対して、日本ではそのような人はほとんどおらず、かわりに中絶が選択されやすい。日本における婚姻外出産の欠如に対しては、それに対する法的的な差別や経済的な不平等が指摘されてきたが、前者に対しては近年大きな改善が見られること、後者に関してはアメリカも同じような状況であることを持って退ける。またアメリカに比べても婚姻外の子育てに対して賛成の意見がそこまで少なくないことから、筆者らは個人内部の選好が日米で異なるという仮説を唱える。分析の結果、筆者らは日本においてはシングルマザーという選択は倫理的に劣ったものとして認識されていることが分かった。日本では、結婚がもつ実用的な利益・特に子育てにとっての必要性から結婚が選ばれるのに対して、アメリカでは結婚は一つの理想的なものとして考えられており、子どもを育てる必要性から結婚が選択されないとする。この意味で、アメリカでは結婚と子育ては別のものとして捉えられており、シングルマザーという選択も立派なものとして考えられている。中絶は、日本では最も責任のある選択と考えられるのに対して、アメリカでは評価はその逆となる。

Ishida, H. 2013. “The Transition to Adulthood Among Japanese Youths: Understanding Courtship in Japan.” The annals of the American academy of political and social science 646(1):86–106.
 この論文では、現代日本の若者のcourtship恋愛について検討している。青年期から大人への意向が長期化するに伴って、日本では初婚年齢の上昇が続いている。しかし、現在結婚せず恋人のいない若者の多くは恋人が欲しいと望んでいる。全体的に、日本の若者の結婚までの道のりを海外の研究者に丁寧に解説している論調だ。例えば、論文では日本ではヨーロッパのように同棲が広まらず、また婚姻外で子どもを持つことにも拒否的になっていることを挙げて、若者にとって結婚相手を捜すことが重要であると論じている。筆者は恋人を捜す活動として何がもっとも普及しているのか、どのような人がそうした活動をしているのか、積極的に探すことがパートナーを見つけることに寄与するかを検討している。

Raymo, J. M., and Y. Xie. 2000. “Temporal and Regional Variation in the Strength of Educational Homogamy.” American sociological review 773–81.
 この論文は、Smitsらのeducational homogamy(学歴同類婚)の国際比較の論文へのコメントをもとにしている。educational homogamyは社会の開放性を測る指標として社会移動と並んで広く用いられてきた。65カ国のデータを比較したSmitsらの分析では、経済発展とhomogamyの関係は前者を横軸、後者を縦軸にとった時に、逆U字型になるという。つまり、経済発展が進むに連れて行ったんはhomogamyが促進するものの、さらに発展が進むとhomogamyは減少し開放的な社会になるという。その一方で、東アジアの儒教国家では高いhomogamyが見られたとする。筆者らは、彼らが近代化がhomogamyに等しい影響を与えると考えながらも、東アジアを独立に捉えていることを批判する。この分析は単一時点のクロスセクショナルなものであるが、この分析結果に対して筆者らが用いたのは日本、中国、台湾、そしてアメリカの二つのコーホートをデータである。分析の結果、確かに経済発展がhomogamyに府の影響を与えることは確認されたが、日本はアメリカと同じくらいhomogamyが強い国であり、一方で台湾は高くなく、儒教社会の高いhomogamyの仮説は確認されなかった。

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