January 28, 2018

Japanese Sociologists/Demographers Completing PhD in English Speaking Countries

知人(友人)のT.K.氏と一緒に「英語圏で博士号を取得、あるいは修了した日本の社会学・人口学者リスト」を作成中で、現在75人に達したので簡単に集計してみました。

「日本の」部分の定義ですが、日本の高校、学部のいずれかを出た後に博士課程に進まれている方を対象にしています。したがって、日系アメリカ人の研究者は集計に含めていません。

この集計の主要な目的は、近年、社会学を含む社会科学系の日本からの留学者が少なくなっている?という言説に対して、一定の回答をしようとすることにあります。

なお、全ての方が博士号を取得されたわけではありませんが、アカデミアで活躍されている方も多くいます。そこで、定義を若干広くして、博士課程に在籍し、少なくとも単位は取得したとみなせる人も対象に含めています。ただし、取得年、退学年がわからない方は、データセットには含めていますが、今回の集計からは除外しました。
また、1958年に河野稠果先生がブラウン大学を卒業されているのですが、1960年代に修了された方を見つけることができなかったため、分析は1970年代から開始しています。

以上のような処理を経て、卒業年を基準に5年コーホートを作り、各コーホートごとに何人の卒業者がいるかを示したのが以下の図です。



1970-80年代に修了した研究者はすでに引退していたり、そもそもウェブページを持ってなかったりするので、だいぶ過小に見積もっている気もします。しかしながら、それでも90年代前に留学を始めた日本の人が相対的に多く、そのために1995-1999年コーホートでは15人の修了者がみられるのではないでしょうか。これに比べて、2000年代コーホートからは修了者の数は減っているように見えます。もちろん、修了したと言っても、色々な事情で(現時点で)大学で職を得ていない場合もあるでしょうから、それについても過小に見積もっている可能性は残ります。

January 24, 2018

国勢調査における「不詳」

国勢調査は平成17年(2005年)から平成22年(2010年)にかけて、「分類不能の職業」が1%ちょっとから5%台にグッと上がるのが不思議だったのだが、不詳割合が増加しているのは学歴や5年前居住地でも同様で、背景としては、おそらくプライバシーを配慮して調査員の確認をやめたことが関係している。

関連する文献として、
小池司朗・山内昌和「2010年の国勢調査における「不詳」の発生状況:5年前の居住地を中心に」『人口問題研究』70(3), 325-338.
http://websv.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19981809.pdf

遡れば、2000年から2005年にかけて、それまで調査員が尋ねる形式だったものをやめて、対象者による記入方式に変更した。それでも、2005年の不詳割合は少なかったのは、回収時に調査員が確認していたためである。

不詳割合は特に学歴と5年前の居住地で目立つ。学歴は2000年調査で3.5%の不詳割合だったのが、2010年には12.1%まで増加している。5年前の居住地は、2000年時点では0%だったのが、2010年には6.5%になっている。そして、不詳の発生は東京や大阪などの流入が起こりやすい地域で生じており、ランダムには発生していない。

調査法の議論に、ベターはあってもベストはない。調査員の確認を省いたのは、確認によってプライバシーを侵害されると考える対象者の拒否を防ぐためだろう。この方策がどれだけ効果を持ったのか計りかねるが、昨今の個人情報への関心からみると、対応自体は間違っていない。しかしながら、国勢調査は人口センサスとして1級の価値を持つ機関統計であり、不詳の発生はその質を損ねるものでもある。今後、どのような方法で回収率を向上させた上で、不詳割合を低くするのかがますます重要になるだろう。

January 3, 2018

ssm所感

先日までSSM研究会が走っており、現在は報告書執筆の段階。M1のタイミングでギリギリ入らせてもらって、色々と勉強になることが多かった。

SSMで自分が所属していた家族・結婚部会は、家族社会学的な関心の研究が少なかった。「家族・結婚」よりも、むしろ部会の名前は、結果的に「人口」の方が的を得ていたと思う。

自分の中での家族社会学の定義は、同意もされないと思うし体系的なものでもないけれど、具体的に何をやっているかでいえば、基本的には家族の中をみる研究で、夫婦であれば分業意識や家事分担であり、親子であれば世帯構成の変化であったり、親子の情緒的な関係など。それを抽象化すれば、家族の機能や、相互作用ということになるだろう。

例えば、性別分業の研究は、意識の部会だった(SSM的には意識という領域があるのがそれ自体興味深い)。そういう家族内部の研究よりも、弊部会では人口学的な行動(結婚、出生、離婚)と階層の関係の話が多かった。それが家族社会学の守備範囲ではない、と言っているわけではないが、理論・方法的にも階層と人口の先行研究がメインだった(それは、フレームワークとして依拠している先行研究が、階層から人口学的なアウトカムを見ている(アメリカ的な)ものが多い、というのもあると思う)。

そうした家族内部の相互作用や機能を、調査票の意識項目から見出す研究は、これまでもされてきたし、これからも研究されるだろうが、方法的にこれだけ家族の動的な側面を追えるアプローチが発展し、主流化しつつある中で、SSMのような調査を用いて、一時点しかみられない意識をみる意義というのが、いまいちわからないのも事実。

もちろん、SSMを複数使用したり、コーホートで比較するのもありえるアプローチだと思うけれど、そうした時系列的な比較をする場合、問いを提起する積極的な根拠として、時系列的な変化を匂わす文脈が欲しい(意識が時代で、あるいはコーホートで変化している可能性、など)。今まで使い古されている変数の場合には、とくに。

もちろん、家族を形成しない人も増えているし、家族を解消する人も増えている中で、ある一時点のスナップチャットを意識として取り出すよりも、家族関係の変化(未婚→既婚→離婚など)が意識の変化に与える影響をみたい、というのが流れとしてはあるのではないかと勘ぐっている(あくまで個人的な印象)。