R. K. マートン 「準拠集団行動の論理」 『社会理論と社会構造』 pp.207-256
<要約>
〔序言〕
・社会理論と経験的調査の交流は双方向的(207)
=「系統的な経験的資料は課題を出したり、また往々予期されていなかった線にそって解釈を下す機会を提供したりするが、これが社会理論を進展させる一助となる。一方、社会理論は経験的調査から得た知見の妥当する条件を示すことによって、この知見の持つ予測的価値の範囲を決めたりその価値を増大したりする。」(207)
・「アメリカ兵」の系統的調査を使い、理論と調査の相互作用を「準拠集団行動の理論」に絞り検討する(207)
・関連した二つの主題についても触れる(208)
・集団属性と社会構造の統計的指標を今後の調査に系統的に織り込むことの特殊な価値(208)
=調査事例をインテンシヴに再検討することで調査によって得られた知見を高次の抽象化、一般化に包摂(208)
=どの点で準拠集団の理論が拡大され、戦略的視点を持った調査で追求されるべきかの決定(208)
(理論的拡充を調査部の得た知見に立脚する経験的調査の中へどう織り込むかについて配慮することで、理論の蓄積と新しい調査の相互交流に持続性が保証される、208)
・心理学的に分析した資料を機能社会学が補足(208)=機能的社会学と準拠集団論の緊密な関連の指摘(208)
第一節 相対的不満の概念(209-215)
・相対的不満の概念は操作的性格を持つ(210)
「アメリカ兵」の中には正式な概念規定がないが社会学理論の中で確立している概念との類縁性が認められるため、正式の規定が欠けていることは大きなハンディキャップではない。(209)
・相対的不満(既婚の兵士→未婚の同僚/未招集の既婚の友人 ・教育程度の低い兵士→未招集の知人、友人など)
※兵士の地位の差=独立変数 兵士の感情と態度=従属変数
地位の差の態度や感情への影響を解釈=媒介変数=相対的不満の概念(211-212)=準拠枠(解釈変数)(208下,212)
・準拠枠は三種あり(212)、それらは互いに混合し合う(213) 214の図を参照
・1.実際の結合関係(自分/他人)2.同じ社会的地位、部類(既婚/既婚)3.違う社会的地位・部類(非戦闘員/戦闘員)
→こうした分類によって「どんな場合に自分の所属する集団/しない集団が態度形成の準拠枠になるのか」という準拠団集行動論(ママ)の発展のための中心的意義が出てくる(214)
第二節 相対的不満か相対的不満か
・「アメリカ兵」の執筆者は(相対的)不満を重視
なぜ不満を抱いているか→自分と他者を比べているから
but自分と他者を比べているので不満を抱いており、この意味で「不満」は相対的不満の付随的、特殊的な要素(216)
第三節 準拠集団としての所属集団(217-221)
#事例1
「能力のある兵士は昇進のチャンスに恵まれていると思いますか」
→昇進機会の少ない兵科の方が質問に対する意見が肯定的に(217)
調査部の説明
昇進率が一般に高いと、集団成員(同じ釜の飯をくっている他の連中)の希望と期待が過大になる(218)
理論的含み
・系統的な経験的データがあったからこそ、例の変則的な型が嗅ぎだされた(218)
→新しい理論の可能性=経験的調査のもつ創造的機能(218註)
・自分と同じ地位にある個人が自己評価の準拠枠であるという仮説を提示(219) →社会学的問題の提起
この種の型の発生を促す条件は何か/比較する相手は誰なのか/相手はなぜ人によって違うのか
・自己評価と制度に対する評価の分別を提示
第四節 複数の準拠集団(221-229)
#事例2 葛藤する準拠集団
通常士気旺盛 軍隊はうまくいっている
海外にいる非戦闘隊員 32% 63%
合衆国に駐屯する兵士 41% 76%
調査部の説明
非戦闘隊員の不満が予想より低い要因
=「不満と報償の程度が各自異る」(222) = 母国に残っている兵士>海外の非戦闘員>戦場部隊員
(これは比較のための二つの文脈が交叉していることを示唆している)
理論的含み
・比較のための二つの文脈が互いに交叉した目的のために作用し、それが海外の非戦闘員の評価を左右する(222)
・仮説=個人の占める地位と準拠集団とそれの間に或る類似性が認知され、想像されなければ、比較は生じない(223)
・特定の共通の準拠集団に注意を集中するのは、社会構造の制度的規定のためである(226)
#事例3 互いに支持しあう準拠集団
「あなたが軍隊に入ったとき、自分は招集を延期されるべきであったとお考えでしたか?」(225)
20歳以上・既婚者・ハイスクール卒業せず→41%が徴兵に反対
20歳以下・未婚者・ハイスクール出身 →10%が徴兵に反対
調査部の説明
軍隊にいる未婚の同僚よりも既婚の自分が犠牲
民間にいる既婚者よりも軍隊にいる既婚の自分が犠牲
→既婚者は未婚者よりも、いやいやながら、または不公平だという感じを抱きつつ、入隊することが多い。(225)
理論的含み
1.特定の共通の準拠集団に注意を集中するのは、社会構造上の制度的規定のためであるという仮説の裏付
2.非個人的な地位部類と地位部類の代表者と社会関係を結んでいる場合、どちらが、個人の評価に強く影響するか
3.他の個人や集団の状況について認識が、どのような過程で、どのように(正確に/歪んで)評価されるのか
4.準拠集団の概念がどんな経験的地位を持つか
5.どんな条件で人は特定の個人や準拠枠を明示的に比較するのか
第五節 準拠集団に由来する行動の斉一性(229-238)
・(前節まで)相対的不満の概念を明示的に利用した調査の検討を通し、これがより一般的な準拠集団行動の理論に織り込まれること、次にこの研究が端緒になって新しい累積的調査の対象となる理論的問題が生じることを示す
・この節では、準拠集団論が相対的な不満よりももっと応用が利くものであることを示す
#事例4(230-231)
人員交代の烈しさ→戦闘部隊には未経験者のみの部隊や戦闘のヴェテランと同じ部隊に入る未経験者もいる
→集団脈絡が色んなタイプの人間に及ぼす影響を検討
「態度の領域」の3質問
平気で戦場に赴く 隊をリードできる 身体良好
未経験者のみ 45% 中 57%
混合部隊の未経験者 38% 低 56%
混合部隊のヴェテラン 15% ? 35%
調査部の説明
・まちまちな傾向に対し、まちまちな説明に(231)
理論的含み
・データを概念的に再定式化→第一の変数は「態度」の一方、第二の変数は「自己評定」である(232)
・理論的背景=集団成員として下位にある者がある集団に受容されようとすると、その価値に同調する(233)ヴェテランの感情と価値に全て同調する(233)
→一般民間人のようなヒロイズムをもつ未経験者は「戦闘は地獄だ」と考えるヴェテランの価値に同調する
→この仮説は第一のデータとは一致 but第二のデータとは不整合に見える(234)
→この質問が自己評定に関わる+ヴェテランはリーダーシップを持つには実際の戦闘経験が必要と考える
→補充兵士はこの規準を自分に適用するため、直接彼らと接することのない新編成部隊よりも自己評価は低い(235)
・補充兵士はヴェテランと同じ地位を望むだけで、身体の自信のなさは関係してこない(236)
第六節 社会構造の統計的指標(238-240)
・比較社会学では厳密な比較が欠けていたため、多くの場合「異った」社会構造を示さず、通常それぞれの集団で同じ地位にある人の行動を系統的に比較せず(239)
・調査部の調査は社会構造の指標とその中にある個人の行動指標、この両者を発展させる可能性(240)
第七節 準拠集団論と社会移動(240-248)
・招集された人間が軍の価値の同調することと、その後に彼らが昇進することの間に、どの程度の関係があるか(240)
#事例5
どんな連中が比較的昇進しやすいかについての個々の事例
軍の規律は厳格ではない→19%が昇進 そのほか→12%が昇進(241)
調査部の説明
将校が一人の兵士を昇進させようかどうかと判断する際に、多少とも入ってくる一つの要因は、その兵士が公的に認められた軍のモレスに同調しているか、否かということである(241)
理論的含み
・準拠集団論から再整理→公的な軍のモレスへの同調は外集団の規範への同調、内集団の規範への非同調(242)
→1.外集団への同調はどのような機能的結果、逆機能的結果をもたらすのか
2.どんな社会過程によりこの志向が始められ、維持され、歪められるのか(242)
・1.のために個人、下位集団、社会体系の三者に対する結果を区別して分析
・個人にとって上のような志向は、昇進後の適応を容易にするという意味で将来を見越した社会化である(243)
※こうした志向が個人に鶏機能的になるためには社会の開放性が不可欠(243,244)
・将来を見越した社会科は内集団の規範に同調しないため、集団や階層には逆機能である(244)
・軍という社会体系にとって機能的かは今後の調査に委ねられる(244)
・公的な制度の正当性に兵士が関心を抱いていること、社会的な制度に対する正当性の付与は集団葬ふぉのまたは、個人葬後の間で典型的に行われる比較の幅を明らかにする(244,245)
・2.について。外集団価値へ同調すればするほど、内集団から孤立することになるが、従来の社会学の領域ではこのような集団疎外に系統的な注意が払われなかった(246)今後、準拠集団論の枠組みを用いた系統的な調査により、異なる条件下に生じる同じ過程の現れ方として集団疎外が捉えられる必要がある(247)
第八節 心理的機能と社会的機能(248-252)
・個人、集団・社会体系で一つの行動に対する結果が違う以上、心理学的・社会学的立場の両方からの考察が妥当(248)
#事例6
<補充廟の例>→補充兵が抱く、異常な心理的不安(251)
・補充廟での経験が当の補充兵にどのような影響を与えたか。(心理学的立場)
・補充廟が一集団から一集団への移動という観点から組織にどのような影響を与えたか(社会学的立場)
→補充兵が新しい戦闘部隊にたやすく編入されるためには、訓練部隊からの直接の転属は避けられる(251)
第九節 心理的機能と社会的機能(252-256)
・準拠集団論によって集団類型の記述が可能になる。
Butこの関係を記述したサムナーは分析態度を怠り、外周団に積極/消極的、いずれの志向を持つかを考慮せず(253)
・ジェームズ・クーリー・ミード→系統的な研究に基づき、先行者の定式を改善することはせず(254)
・ハイマン・シェリフ・ニューカム→準拠集団論の理論的問題を提起するような研究(254)
・解釈の特殊化、概念の孤立化を防ぎ、理論的重複や関連を明らかにし一般的な理論体系を構築することが必要(255)
<コメント>
214で述べられているように、所属する/しないの二元コードによって所属集団のみが重要な準拠集団と考えたミードのような社会心理学の限界を超えたことは評価できる。また、215にあるように、従来の社会学の焦点(従来の社会学の著作には実際用いられもしない数々の概念規定 210)を新しい用語で言い換えるのではなく、所属外集団の概念を調査によって導き出したことで、自分の所属する集団外に目を向けさせたことは疎外や孤立の問題に対し理論的な開拓をしただろう。もちろん、第4節など、少々無理があるのではないかという気もぬぐえないが。
月並みな感想になってしまった。最後に、特に〔序言〕で述べられていた以下の言葉の意味が当初分からなかったことを付言しておきたい。読了後、少しは分かった気がするが、まずは語の定義をきちんとしてみたいと思う。
<参考文献>
ロバート.K.マートン (1961) 森東吾 森好夫 金沢実 中島竜太郎訳 「準拠集団行動の論理」 『社会理論と社会構造』 みすず書房 pp.207-256
ロバート.K.マートン (1969) 森東吾 森好夫 金沢実訳 「準拠集団行動の論理」 『現代社会学大系13 社会理論と機能分析』 青木書店 pp.152-226
November 23, 2011
November 15, 2011
大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 要約
岩澤美帆 (2004)「男女関係の変容と少子化」,大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 原書房 pp.111-132
1. 出生力を規定する男女関係
出生力が経済事情や文化など様々な社会的状況の影響を受けることは間違いないが、そのような外部要因は出生力を寄り直接的に規定する要因(近接要因)を通じてのみ出生力に影響を与えると考えられている。
Downing and Yaukey 1979 出生は親密な男女による何らかの安定的な関係、特に婚姻関係においてのみ一般に社会から容認される→配偶関係は近接要因
1960— 世界的に結婚行動を巡って大きな変化が生じるように
男女関係の変化が出生力にどのような影響を与えうるのかについて婚外子の動向と離婚の関係に焦点を当て、欧米の先行研究に触れながら日本の現状を説明
2. 先進国に共通する結婚離れ
1960年代以降先進国共通に見られる婚姻離れ
婚姻率の低下と同じくして多くの国で離婚が増加
→離婚が一般化しているという認識は結婚への投資を引き下げ、ゆえに結婚が続く見通し自体を低めるという効果をもたらす(Bumpass 1990)
Thornton 1989 結婚は社会生活上必ずしも不可欠なものではなく任意の行動として認識されている
3. 非婚社会における様々な男女関係
(1)婚姻率の低下を相殺する同棲率の増加
初婚率・再婚率の低下、離婚率の増加→独身者の増加、独身期間の長期化
but 実際は先進国の多くで同棲が増加→非婚社会のイメージは変容
同棲の背景:晩婚化、離婚の増加と同じく、個人主義の浸透、世俗化、女性の労働力参加、婚前交渉への抵抗感の薄れ。
同棲の(社会学的?)意味づけ
1. 積極的同棲
1.1. 同棲は独身の派生形態説
1.2. 同棲は婚姻の派生形態説
2. 消極的同棲
事実婚説
Smock and Manning 1997 男性パートナーの経済的地位が低いほど同棲から婚姻関係への移行が少ない。
(2)日本における同棲の実態=ほとんどの人は同棲を一時的な状態と考えており、いずれは現在または他の相手との結婚を望む。
(3)非同居カップルとLAT関係
婚姻率の低下している地域の全てで同棲が婚姻に置き換わっているわけではない。(南欧や東欧、日本では同棲が少ない)
非同居カップル=LAT Living apart together
4. 少子化との係わり
日本においては、晩婚化及び非婚化が1970年代半ば以降の出生率低下の7割を説明(岩澤2002)
but 他の先進国では1970年代以降婚外出生が増加しており、結婚行動と出生率関係は従来の枠組みで捉えられない。
婚外出生が望ましいライフパターンとは考えられているわけではない。
婚外子の増加は婚姻のメリットが消失したからとも言える。
日本では婚姻率の低下とともに非同居型カップルが増加、そして若い年齢層では非同居型カップルのもとで多くが妊娠している。統計的に見ても、大部分が婚姻外の関係のもとで出産
・離婚及び再婚の影響(省略)
※日本に置いては、出生が婚姻関係においてのみ社会から是認される傾向が強い、そのような社会では晩婚化や離婚などによる婚姻持続期間の短縮は出生率にマイナスの影響を与えるだろう。
要約
高橋重郷 (2004) 「結婚・家族形成の変容と少子化」,大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 原書房 pp.133-162
1. 結婚・家族形成の変容とその人口学的特徴
落合1994 少子化現象は安定していた人口置換水準の出生率がその水準を割り込み、低下を続ける現象であるが、それはちょうど戦後の家族が安定していた時期からその後の変容へと続く現象に対応している。少子化現象は結婚・家族形成の変容に伴う人口減少であるみることができる。
・女性の年齢別未婚率は1955年から1970年代までは安定的に推移
・20代前半で7割、20代後半で2割が未婚、95%以上の人が結婚する皆婚社会
・しかし、1970年代半ばの以降20代の未婚率が上昇
・特に20歳代後半の未婚率は1980年代半ばに三割を超え、1985年から1990年の5年間に10ポイントの上昇を見せ4割に。
・その後も上昇が続き、2000年には20代後半の5割が未婚
・こうした家族形成の変化は1960年代以降の出生コーホートで明らかに夫婦出生率の低下が見られる。
2. 結婚・家族形成変化の説明仮説
(1) 阿藤1997 女性の社会経済適地の変化による価値変動仮説
(2) 山田1999 宮本2000 パラサイトシングル仮説
(3) 金子1994 需要供給仮説 岩澤1999 結婚概念の変化仮説
3. 経済構造の変化と女性の社会経済的地位の変化
・産業別男女別就業者割合
・女性の働き方と配偶状態別に見た有業率
・女性人口の有業率
・女性の働き方と配偶状態別にみた有業率
→高度経済成長期以降、女性を取り巻く経済環境は大きく変化し、多くの女性が労働力市場に参入し、特に20歳代から30歳代の未婚者の正規雇用労働力化が進行すると共に、35歳以上の既婚女性が労働力市場に多く参入。
4. 結婚・家族形成の時期、時代区分
レキシス図法による期間合計出生率とコーホート合計出生率
5. 女性の就業行動の変化と結婚形成の変化
・出生コーホートでみた1960年代コーホート以降の急速な未婚率上昇は、これらの出生世代が、1980年代に青年期に達し、第三次産業部門における高い雇用労働力需要によって雇用労働力化したことにより、相対的に高い賃金水準が実現し、比較的豊かな生活水準が獲得されたとみることができる。
・男女賃金比
6. 女性の就業行動の変化と家族形成の変化
・第一子出産前職種別就業率
・雇用形態別に見田男女の所得階層別就業者数
1. 出生力を規定する男女関係
出生力が経済事情や文化など様々な社会的状況の影響を受けることは間違いないが、そのような外部要因は出生力を寄り直接的に規定する要因(近接要因)を通じてのみ出生力に影響を与えると考えられている。
Downing and Yaukey 1979 出生は親密な男女による何らかの安定的な関係、特に婚姻関係においてのみ一般に社会から容認される→配偶関係は近接要因
1960— 世界的に結婚行動を巡って大きな変化が生じるように
男女関係の変化が出生力にどのような影響を与えうるのかについて婚外子の動向と離婚の関係に焦点を当て、欧米の先行研究に触れながら日本の現状を説明
2. 先進国に共通する結婚離れ
1960年代以降先進国共通に見られる婚姻離れ
婚姻率の低下と同じくして多くの国で離婚が増加
→離婚が一般化しているという認識は結婚への投資を引き下げ、ゆえに結婚が続く見通し自体を低めるという効果をもたらす(Bumpass 1990)
Thornton 1989 結婚は社会生活上必ずしも不可欠なものではなく任意の行動として認識されている
3. 非婚社会における様々な男女関係
(1)婚姻率の低下を相殺する同棲率の増加
初婚率・再婚率の低下、離婚率の増加→独身者の増加、独身期間の長期化
but 実際は先進国の多くで同棲が増加→非婚社会のイメージは変容
同棲の背景:晩婚化、離婚の増加と同じく、個人主義の浸透、世俗化、女性の労働力参加、婚前交渉への抵抗感の薄れ。
同棲の(社会学的?)意味づけ
1. 積極的同棲
1.1. 同棲は独身の派生形態説
1.2. 同棲は婚姻の派生形態説
2. 消極的同棲
事実婚説
Smock and Manning 1997 男性パートナーの経済的地位が低いほど同棲から婚姻関係への移行が少ない。
(2)日本における同棲の実態=ほとんどの人は同棲を一時的な状態と考えており、いずれは現在または他の相手との結婚を望む。
(3)非同居カップルとLAT関係
婚姻率の低下している地域の全てで同棲が婚姻に置き換わっているわけではない。(南欧や東欧、日本では同棲が少ない)
非同居カップル=LAT Living apart together
4. 少子化との係わり
日本においては、晩婚化及び非婚化が1970年代半ば以降の出生率低下の7割を説明(岩澤2002)
but 他の先進国では1970年代以降婚外出生が増加しており、結婚行動と出生率関係は従来の枠組みで捉えられない。
婚外出生が望ましいライフパターンとは考えられているわけではない。
婚外子の増加は婚姻のメリットが消失したからとも言える。
日本では婚姻率の低下とともに非同居型カップルが増加、そして若い年齢層では非同居型カップルのもとで多くが妊娠している。統計的に見ても、大部分が婚姻外の関係のもとで出産
・離婚及び再婚の影響(省略)
※日本に置いては、出生が婚姻関係においてのみ社会から是認される傾向が強い、そのような社会では晩婚化や離婚などによる婚姻持続期間の短縮は出生率にマイナスの影響を与えるだろう。
要約
高橋重郷 (2004) 「結婚・家族形成の変容と少子化」,大淵寛・高橋重郷編 『少子化の人口学』 原書房 pp.133-162
1. 結婚・家族形成の変容とその人口学的特徴
落合1994 少子化現象は安定していた人口置換水準の出生率がその水準を割り込み、低下を続ける現象であるが、それはちょうど戦後の家族が安定していた時期からその後の変容へと続く現象に対応している。少子化現象は結婚・家族形成の変容に伴う人口減少であるみることができる。
・女性の年齢別未婚率は1955年から1970年代までは安定的に推移
・20代前半で7割、20代後半で2割が未婚、95%以上の人が結婚する皆婚社会
・しかし、1970年代半ばの以降20代の未婚率が上昇
・特に20歳代後半の未婚率は1980年代半ばに三割を超え、1985年から1990年の5年間に10ポイントの上昇を見せ4割に。
・その後も上昇が続き、2000年には20代後半の5割が未婚
・こうした家族形成の変化は1960年代以降の出生コーホートで明らかに夫婦出生率の低下が見られる。
2. 結婚・家族形成変化の説明仮説
(1) 阿藤1997 女性の社会経済適地の変化による価値変動仮説
(2) 山田1999 宮本2000 パラサイトシングル仮説
(3) 金子1994 需要供給仮説 岩澤1999 結婚概念の変化仮説
3. 経済構造の変化と女性の社会経済的地位の変化
・産業別男女別就業者割合
・女性の働き方と配偶状態別に見た有業率
・女性人口の有業率
・女性の働き方と配偶状態別にみた有業率
→高度経済成長期以降、女性を取り巻く経済環境は大きく変化し、多くの女性が労働力市場に参入し、特に20歳代から30歳代の未婚者の正規雇用労働力化が進行すると共に、35歳以上の既婚女性が労働力市場に多く参入。
4. 結婚・家族形成の時期、時代区分
レキシス図法による期間合計出生率とコーホート合計出生率
5. 女性の就業行動の変化と結婚形成の変化
・出生コーホートでみた1960年代コーホート以降の急速な未婚率上昇は、これらの出生世代が、1980年代に青年期に達し、第三次産業部門における高い雇用労働力需要によって雇用労働力化したことにより、相対的に高い賃金水準が実現し、比較的豊かな生活水準が獲得されたとみることができる。
・男女賃金比
6. 女性の就業行動の変化と家族形成の変化
・第一子出産前職種別就業率
・雇用形態別に見田男女の所得階層別就業者数
November 14, 2011
少子化とエコノミー
2008年に出版された 篠塚英子・永瀬伸子編著 『少子化とエコノミー パネル調査で描く東アジア』 作品社 から二つの論文を。お茶大のジェンダー研究者が中心となって韓国・ソウルと中国・北京でおこなったパネル調査がメインで、日本の出生動向調査と一緒に分析しています。ジェンダー研究のフロンティアシリーズということで新しく入ってくる知識が多く結構面白かったです。反面、マルキシズム的というか、経済状態で全て説明できるんじゃないかって勢いで書いているので若干biasedな感じがしました。例えば、未婚化や非婚化現象を説明するに非正規労働の増加のみにしか言及してなかったり、そういった批判どころはあるかと思いますが、それを差し引いても日中間のパネル調査を実施した意義はデカいでしょう。
全て読んだわけではないですが、お茶大のジェンダー研究は質よりも量って感じですね。
ちなみに、編者の篠塚英子先生は白波瀬佐和子が日本に帰国して最初に就職した社人研(社会保障・人口問題研究所)で、彼女を研究補佐員として採用した上司だったようです(白波瀬佐和子「少子高齢社会の見えない格差」あとがきより)
要約
永瀬伸子 (2008) 「少子化、女性の就業とエコノミー」 篠塚英子・永瀬伸子編著 『少子化とエコノミー パネル調査で描く東アジア』 作品社 pp.59-76
0.前書き
・日本と欧米の対比
<日本>低出産、出産後7割が一時的に専業主婦=無業←→<欧米>女性の出産後の就業継続
・パネル調査
→日本と韓国・ソウルの類似性
・子どもが幼いときの専業主婦率
・男女の賃金格差
・家族形成の停滞、少子化の進行
・日韓と中国の対比
<中国>共働きメイン 学歴差>性別差 but一時的な離職増加
・共通項=子どもが育てやすい社会ではない
1. 出産と女性の就業継続
「かつては欧米でも出産後仕事を中断する女性が多かったのだが、過去30年に仕事を続ける女性が大きく増えた。しかし、日本の第一子一歳時の就業継続は2-3割程度であり、驚くことにこの割合は1980年代から変わっていない。興味深いことに、ソウル女性の状況も、労働力の低さと、出産後の無職比率に過去20年間変化がないという点で日本と極めて似ていることが分かった。女性の就業機会の拡大や女性の意識変化は、日韓では女性の出産後の就業継続ではなく、出産の先送り、あるいは非婚・非出産として現れている。」
中国では「改革開放政策により、国有企業が雇用調整を断行、リストラがなされ、有期雇用計画が一般的となり、個人間の賃金格差が拡大した。こうした背景の中で一部の女性の無職化が進展した」ため、北京の出産後の就業は、かつては有業が当たり前だったが、近年むしろ出産離職が増えている。
2. 子どものケア役割
保育園の利用など、伝統的な考え方が薄れているとはいえ、「母親が働いているのであれば、母親以外の育児も当然のものとして受け止める」北京、ソウルよりも、日本では「母親の手による育児」の礼賛、あるいはこだわりが強いと受け取れる。
父親の育児役割は日本が高いが、時間は短い
<中国>年齢と共に女性の就業率が下がっていく傾向にあるため、中年女性に孫の面倒を見る時間的な余裕が出ている。
3. グローバル化と不安定雇用(労働市場の変化)
<韓国>・非正規の増加 ・結婚・出産の遅延
(仮説)夫婦分業を前提(10章)→相対的な男女の賃金の低下→夫婦分業が不可能になる急速な賃金構造変化、2000年以降の急速な少子高齢化
<日本>永瀬2002 雇用の非正規化が日本に置いても男女の結婚を遅延させ、家族形成を遅延させていく計量分析
<中国>高い成長率→労働市場の変化は非婚を促進しないが、出産遅延という形で現れている。
<図3-5>
4. 不安定雇用と夫婦の意識
<日本・韓国>女性の収入は男性の収入を補助するものと思われているが、雇用の不安定化が日韓の若者の意識を変化させている
ダグラス・有沢の第一法則:夫の世帯年収が低い世帯ほど妻が家計補助として働く
日韓で支持、中国では支持されず
日韓で増える非正規+「少なくとも子どもが小さいうちは母親が仕事を持たずに家にいるのが望ましい」へのどういう→出産以後の就業継続困難
5. 子育てがしにくい国、東アジア
・少子化については、経済発展とともに不可避に進行するという考え(Bumpass1990)が支配的but最近は女性が働ける環境が出来ていない先進国ほど少子かが深刻(Morgan 2003)
要約
尾崎裕子・山谷真名 (2008) 「婚姻意識と性別役割意識」 篠塚英子・永瀬伸子編著 『少子化とエコノミー パネル調査で描く東アジア』 作品社 pp.91-112
・北京・ソウル・日本における婚姻、性役割、及び男女の地位の分析
→<婚姻意識>「北京では、独身でいることのメリットが低く、結婚がするべきものという皆婚意識が強い」「ソウルでは、結婚と経済的側面の結びつきが強いということも分かる。」
<性別役割意識>「北京でもソウルでも『夫は仕事、女性は家庭』という狭義の性別役割意識は依然として強いことがわかった」「共働き家庭が多い北京においても、『夫妻ともに仕事をし、家事は等分』したり、あるいは夫が主に家事を担当している夫妻は少なく、『稼得役割は主に夫、家事役割は主に妻』や『夫妻とも仕事をし、家事は妻』という夫妻は多かった」
一見するとエコノミストに矛盾?
中国は社会主義時代に男女平等の考えを押しつけたが、伝統的な規範がまだ残っていることを示すと言えそう。
高学歴化によって男女不平等に否定的見解を持つ女性が増えてきたことは指摘できるだろう。
・独身のメリット
・中国では生涯独身に否定的
・韓国では離婚に対して男女の見解分かれる
・北京ではスウェーデンよりみずからの社会が男女平等と考えているが、高学歴層になると、学歴が高くなるにつれて、<男性優遇>と考える傾向にある。
全て読んだわけではないですが、お茶大のジェンダー研究は質よりも量って感じですね。
ちなみに、編者の篠塚英子先生は白波瀬佐和子が日本に帰国して最初に就職した社人研(社会保障・人口問題研究所)で、彼女を研究補佐員として採用した上司だったようです(白波瀬佐和子「少子高齢社会の見えない格差」あとがきより)
要約
永瀬伸子 (2008) 「少子化、女性の就業とエコノミー」 篠塚英子・永瀬伸子編著 『少子化とエコノミー パネル調査で描く東アジア』 作品社 pp.59-76
0.前書き
・日本と欧米の対比
<日本>低出産、出産後7割が一時的に専業主婦=無業←→<欧米>女性の出産後の就業継続
・パネル調査
→日本と韓国・ソウルの類似性
・子どもが幼いときの専業主婦率
・男女の賃金格差
・家族形成の停滞、少子化の進行
・日韓と中国の対比
<中国>共働きメイン 学歴差>性別差 but一時的な離職増加
・共通項=子どもが育てやすい社会ではない
1. 出産と女性の就業継続
「かつては欧米でも出産後仕事を中断する女性が多かったのだが、過去30年に仕事を続ける女性が大きく増えた。しかし、日本の第一子一歳時の就業継続は2-3割程度であり、驚くことにこの割合は1980年代から変わっていない。興味深いことに、ソウル女性の状況も、労働力の低さと、出産後の無職比率に過去20年間変化がないという点で日本と極めて似ていることが分かった。女性の就業機会の拡大や女性の意識変化は、日韓では女性の出産後の就業継続ではなく、出産の先送り、あるいは非婚・非出産として現れている。」
中国では「改革開放政策により、国有企業が雇用調整を断行、リストラがなされ、有期雇用計画が一般的となり、個人間の賃金格差が拡大した。こうした背景の中で一部の女性の無職化が進展した」ため、北京の出産後の就業は、かつては有業が当たり前だったが、近年むしろ出産離職が増えている。
2. 子どものケア役割
保育園の利用など、伝統的な考え方が薄れているとはいえ、「母親が働いているのであれば、母親以外の育児も当然のものとして受け止める」北京、ソウルよりも、日本では「母親の手による育児」の礼賛、あるいはこだわりが強いと受け取れる。
父親の育児役割は日本が高いが、時間は短い
<中国>年齢と共に女性の就業率が下がっていく傾向にあるため、中年女性に孫の面倒を見る時間的な余裕が出ている。
3. グローバル化と不安定雇用(労働市場の変化)
<韓国>・非正規の増加 ・結婚・出産の遅延
(仮説)夫婦分業を前提(10章)→相対的な男女の賃金の低下→夫婦分業が不可能になる急速な賃金構造変化、2000年以降の急速な少子高齢化
<日本>永瀬2002 雇用の非正規化が日本に置いても男女の結婚を遅延させ、家族形成を遅延させていく計量分析
<中国>高い成長率→労働市場の変化は非婚を促進しないが、出産遅延という形で現れている。
<図3-5>
4. 不安定雇用と夫婦の意識
<日本・韓国>女性の収入は男性の収入を補助するものと思われているが、雇用の不安定化が日韓の若者の意識を変化させている
ダグラス・有沢の第一法則:夫の世帯年収が低い世帯ほど妻が家計補助として働く
日韓で支持、中国では支持されず
日韓で増える非正規+「少なくとも子どもが小さいうちは母親が仕事を持たずに家にいるのが望ましい」へのどういう→出産以後の就業継続困難
5. 子育てがしにくい国、東アジア
・少子化については、経済発展とともに不可避に進行するという考え(Bumpass1990)が支配的but最近は女性が働ける環境が出来ていない先進国ほど少子かが深刻(Morgan 2003)
要約
尾崎裕子・山谷真名 (2008) 「婚姻意識と性別役割意識」 篠塚英子・永瀬伸子編著 『少子化とエコノミー パネル調査で描く東アジア』 作品社 pp.91-112
・北京・ソウル・日本における婚姻、性役割、及び男女の地位の分析
→<婚姻意識>「北京では、独身でいることのメリットが低く、結婚がするべきものという皆婚意識が強い」「ソウルでは、結婚と経済的側面の結びつきが強いということも分かる。」
<性別役割意識>「北京でもソウルでも『夫は仕事、女性は家庭』という狭義の性別役割意識は依然として強いことがわかった」「共働き家庭が多い北京においても、『夫妻ともに仕事をし、家事は等分』したり、あるいは夫が主に家事を担当している夫妻は少なく、『稼得役割は主に夫、家事役割は主に妻』や『夫妻とも仕事をし、家事は妻』という夫妻は多かった」
一見するとエコノミストに矛盾?
中国は社会主義時代に男女平等の考えを押しつけたが、伝統的な規範がまだ残っていることを示すと言えそう。
高学歴化によって男女不平等に否定的見解を持つ女性が増えてきたことは指摘できるだろう。
・独身のメリット
・中国では生涯独身に否定的
・韓国では離婚に対して男女の見解分かれる
・北京ではスウェーデンよりみずからの社会が男女平等と考えているが、高学歴層になると、学歴が高くなるにつれて、<男性優遇>と考える傾向にある。
November 13, 2011
阿藤論文(1997)まとめ
阿藤誠 (1997) 「日本の超少産化現象と価値変動仮説」 『人口問題研究』 第53巻 1号 pp.3-20
日本の合計特殊出生率は伝統的多産体制から近代的少産体制への出生力転換を終えた後、10数年間は人口置換水準近傍を維持していたが、1970年代半ばに置換水準を割って以来、今日まで新たな低下局面に入った。この70年代半ばの20年間の出生率動向は振り返ってみれば、2つの期間に分けることが出来る前半期の1973-1984年の出生率は人口置換水準以下に低下していたものの、一時的ではあれ反転の兆しを見せ、84年には1.81を記録していた。これは当時の先進国中最も高い出生率をもつイギリス・フランス・アメリカなどと同じである。しかし、後半の1984年から95年は一直線に低下を続けた。89年以降は人口動態統計史上の最低記録を更新し続け、95年には1.42となった。
こうした70年代半ば以降の出生率の低下の人口学的要因は比較的明らか、→未婚率の増加による優配偶率の低下(シングル化)、世代が若返るほど平均の未婚期間が延びている
未婚期間の伸びは続いているために平均初婚年齢の上昇が進む結果となる。それではこうしたシングル化・晩婚化と主としてそれが引き起こした出生率の低下にはどのような関係があるのか?
出生率低下の説明には二つの仮説がある
1. 技術論的アプローチ(近代的な避妊法の普及)
2. 経済学的アプローチ
ベッカーら 女性の雇用機会が広がり、その賃金水準が高くなるほど子育ての時間コストが上昇し、女性が子子育てよりも雇用労働を選択することになり希望子ども数が減少
70年代半ば以降の日本では1.は有効ではない。この時すでに望まない出産の水準は著しく低かった。←中絶の容認?
2.は非常に有効→戦後男女の高学歴化、女性の労働力化がこの時期のシングルか晩婚化に寄与したことは間違いない。
Butこれだけで本当に問題の説明は可能か?
これら技術的経済的理由以外に文化的要因が挙げられることは少なくない
非先進国→ex経済発展の違いがあっても同じ時期に出生率低下を経験する傾向のある
→先進国の出生率低下も文化的な要因で説明できるのでは?
(2)西欧における価値変動仮説
価値変動仮説とは?
西欧 17世紀— 夫婦関係を中心とする家族観、子どもの社会的意義→19世紀にこれがさらに強まることに。近代家族の誕生(Shorter 1977) 夫婦による「責任ある子育て」が奨励→子ども中心主義(Van de Kar)
ベビーブームの謎
1960年代以降の第二の人口転換(Van de Kar)
世俗化=個人主義化のながれ
若い世代が自己実現欲求を最高の価値とするようになった
帰省の宗教や道徳に縛られなくなり、集合的な利害への関心を弱め、性行動、同棲、結婚、離婚、中絶、出産時期、子どもの数など再生産に関わる行動を個々人の人生におけるオプションとして選択するようになり、自分の人生を犠牲にしてまで子供を持つことをしなくなった
子ども中心主義からカップル中心主義へ
(3)日本における価値観の変化
1.宗教観一般的道徳観
→戦後の日本人の一般的道徳観の変化は極めて緩やか
宗教観の弱体化とともに個人主義化は進んでいるが、自由が何者にも優先するとは考えてはいない
2.個人主義対絶対主義
親扶養義務・男女の役割意識・男女観・→親子、夫婦男女観の変化が認められる・
3.性・結婚・離婚に関する価値観
すべてにおいて寛容に
4.出生規範
低下率はわずか
(4)価値観の変化とシングル化出生率低下の関係
目的:近年の未婚が現象を家族形成過程における男女関係の親密性に関わる行動変化にすなわちパートナーシップの変化から明らかにしようとする
男女関係に関する行動パターンが未婚・既婚といった枠を越えて女子全体としてみた場合にどのように変化しているのか。その結果1990年代を通じて成功経験率もパートナーのいる人の割合もほとんど変化がなかったが、パートナーと同居している人、及び子どもを生んだことのある人の割合が大きく減少していることが分かる。婚姻率はパートナーとの同居割合の指標にほぼ一致し、同調して低下している。すくなくとも女子に関して言えば、今日の未婚化は交際機会の縮小を反映していると言うよりもパートナーシップのあり方が婚姻同居型から非婚非同居型に移行する過程にあるといえる。欧米諸国では非婚同居型が言える。この遺恨は日本や南欧など一部の先進国に特有なパートナーシップといえる
日本の合計特殊出生率は伝統的多産体制から近代的少産体制への出生力転換を終えた後、10数年間は人口置換水準近傍を維持していたが、1970年代半ばに置換水準を割って以来、今日まで新たな低下局面に入った。この70年代半ばの20年間の出生率動向は振り返ってみれば、2つの期間に分けることが出来る前半期の1973-1984年の出生率は人口置換水準以下に低下していたものの、一時的ではあれ反転の兆しを見せ、84年には1.81を記録していた。これは当時の先進国中最も高い出生率をもつイギリス・フランス・アメリカなどと同じである。しかし、後半の1984年から95年は一直線に低下を続けた。89年以降は人口動態統計史上の最低記録を更新し続け、95年には1.42となった。
こうした70年代半ば以降の出生率の低下の人口学的要因は比較的明らか、→未婚率の増加による優配偶率の低下(シングル化)、世代が若返るほど平均の未婚期間が延びている
未婚期間の伸びは続いているために平均初婚年齢の上昇が進む結果となる。それではこうしたシングル化・晩婚化と主としてそれが引き起こした出生率の低下にはどのような関係があるのか?
出生率低下の説明には二つの仮説がある
1. 技術論的アプローチ(近代的な避妊法の普及)
2. 経済学的アプローチ
ベッカーら 女性の雇用機会が広がり、その賃金水準が高くなるほど子育ての時間コストが上昇し、女性が子子育てよりも雇用労働を選択することになり希望子ども数が減少
70年代半ば以降の日本では1.は有効ではない。この時すでに望まない出産の水準は著しく低かった。←中絶の容認?
2.は非常に有効→戦後男女の高学歴化、女性の労働力化がこの時期のシングルか晩婚化に寄与したことは間違いない。
Butこれだけで本当に問題の説明は可能か?
これら技術的経済的理由以外に文化的要因が挙げられることは少なくない
非先進国→ex経済発展の違いがあっても同じ時期に出生率低下を経験する傾向のある
→先進国の出生率低下も文化的な要因で説明できるのでは?
(2)西欧における価値変動仮説
価値変動仮説とは?
西欧 17世紀— 夫婦関係を中心とする家族観、子どもの社会的意義→19世紀にこれがさらに強まることに。近代家族の誕生(Shorter 1977) 夫婦による「責任ある子育て」が奨励→子ども中心主義(Van de Kar)
ベビーブームの謎
1960年代以降の第二の人口転換(Van de Kar)
世俗化=個人主義化のながれ
若い世代が自己実現欲求を最高の価値とするようになった
帰省の宗教や道徳に縛られなくなり、集合的な利害への関心を弱め、性行動、同棲、結婚、離婚、中絶、出産時期、子どもの数など再生産に関わる行動を個々人の人生におけるオプションとして選択するようになり、自分の人生を犠牲にしてまで子供を持つことをしなくなった
子ども中心主義からカップル中心主義へ
(3)日本における価値観の変化
1.宗教観一般的道徳観
→戦後の日本人の一般的道徳観の変化は極めて緩やか
宗教観の弱体化とともに個人主義化は進んでいるが、自由が何者にも優先するとは考えてはいない
2.個人主義対絶対主義
親扶養義務・男女の役割意識・男女観・→親子、夫婦男女観の変化が認められる・
3.性・結婚・離婚に関する価値観
すべてにおいて寛容に
4.出生規範
低下率はわずか
(4)価値観の変化とシングル化出生率低下の関係
目的:近年の未婚が現象を家族形成過程における男女関係の親密性に関わる行動変化にすなわちパートナーシップの変化から明らかにしようとする
男女関係に関する行動パターンが未婚・既婚といった枠を越えて女子全体としてみた場合にどのように変化しているのか。その結果1990年代を通じて成功経験率もパートナーのいる人の割合もほとんど変化がなかったが、パートナーと同居している人、及び子どもを生んだことのある人の割合が大きく減少していることが分かる。婚姻率はパートナーとの同居割合の指標にほぼ一致し、同調して低下している。すくなくとも女子に関して言えば、今日の未婚化は交際機会の縮小を反映していると言うよりもパートナーシップのあり方が婚姻同居型から非婚非同居型に移行する過程にあるといえる。欧米諸国では非婚同居型が言える。この遺恨は日本や南欧など一部の先進国に特有なパートナーシップといえる